五竿風月 ♪磯恋しい♪

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車の契約の仕方【第四話完結】

しばらく自分の時間がない時が続いている。

私の全神経、全体力をかの主役の為に傾注しているからだ。

そろそろハッピーエンドが待っているはずだ。

 

予算の壁

軽自動車を新車とは言え200万を捻出してまで購入するのか。

こんな言い方は、ディーラーやメーカーに対して非常に失礼であるが、参謀である私は車を薦める側の立場として非常に悩んでいた。

自身の過去の経験からしても、軽自動車はこのような高価な代物ではなかったからだ。

また、資産価値という見方をしても、その値に見合う価値があるのか?と自問するが、自答できないままでいる。

 

電脳世界の中に良い物件がないか?

わずかな希望を携えて覗いてみると、割とポジティブな条件の中古物件が転がっているではないか。

時を同じくして、主役も離れた場所で同じ行動を取っていた。

「この車を見に連れて行って欲しい」という連絡が届くまで時間も掛からなかった。

 

その車は、主役が気に入った色を纏っており、まだ産まれて1年ちょっとという好条件に見えた。

店舗までの距離は少し多めであるが、躊躇を要するレベルではない。

私は同行を快諾するとともに、この戦いのクライマックスに向けて身体を休めることにした。

 

いざ出陣

その店舗は中古車専門販売店ではなく、歴としたディーラーであった。

だが、これまで回遊したどの店舗とも異なる古びた面持ちと言うと失礼であるが、重厚な伝統と飾らない一昔前の会社臭さを感じる。

我々は果たして歓迎されているのか?

どちらかと言うと、長期の常連客のみが踏み入ることを許され、一見さんはお断りと牽制されてるようだ。

 

それを物語るように、すぐ傍に見えている目当ての車を横目にしながらも、拝見させてもらえる気配がない。

意外にも客は多く、営業担当者は対応に追われているのだろう。

再び、歓迎されていないのではないかという疑念を抱きつつある私の心が主役に伝染しないように、適当な世間話を繰り出し、ポジティブな雰囲気の醸成を試みる。

 

しばらくお預けの状態が続いた後に、責任者と思しき方が現れた。通常であれば、責任者と最初から交渉が出来る場合は、値引き額の判断が踏み込まれるため、かなりラッキーなはずだ。

だが、この時はラッキーだと感じた気持ちを一瞬で前述の雰囲気が掻き消していく。

芽生えたアウェイ感を封じてしまうために、とにかく目的の車を見ることに集中しよう。

 

実物の確認

責任者に案内され、やっと目的の車に辿り着く。

いくつかの確認のやり取りをしていると、若い営業担当者が近寄ってきた。

どうやら責任者と入れ替わるのだろう。

この車に関しての知識は責任者より豊富であろうことは、少しの会話で理解できた。

 

ここに来て、主役は自発的かつ積極的な確認動作に入る。

一つ一つ確認しては大きく頷いている。

私も助手席に乗り込み車内を見渡してみた。

気になる点は、中古車なのにオプションはほとんど付いていない点だ。

主役は、全方位カメラが装備されていることを大きく評価しているようだが、ナビやドラレコなどが付いていないだけに留まらず、バイザーやフロアマットすら付いていない状態であることは、中古車であるアドバンテージが全く無いということであり、それが私には気になっていた。

百歩譲って、付属がないことを良しとするなら、それに見合う価格でありさえすれば良いのだが。

 

私は、なんとなく価格の納得感の有無を脳内で思考してみた。

約1年落ちの減価償却、付属品が皆無、走行距離は3千ほど、傷一つない綺麗な車体。

新古車に近いくらいの物件ではあるが、やはり割高に感じてしまう。

私の目標金額は概ね決まったのだが、最近の情勢として中古車価格が上昇しているのと、合わせて値引きがほぼ無いのだ。売る側が優位である時代において、この状態は覆しようがない。

しかし、目標金額に届かないまでも、近づいて欲しいし、それにより主役の喜ぶ顔を見たい。

 

主役は、この中古車に完全に照準を定めたようだ。

営業担当者の顔色を見て、この車の販売意欲を測ってみた。十分な手ごたえもありそうな気配を感じる。

とは言え、ここはひとまず引き下がろう。

それとともに相手に考える時間も与えない緩急織り交ぜる作戦で、第二次目標金額の妥結を目指す。

 

最終決断

帰り道、主役に気持ちを聞いた。

やはり、この中古車を買いたいということだった。ここで本人の意思の強さが発揮される。

自ら検索して見つけたというのも、またそれが新車と遜色ない物件であったことなどが、気持ちにバイアスをかけているのだと思う。

私の前述の心配を他所に。

 

振り返ると、私は完全に失敗していた。

新古車・中古車販売店で車種を見定める作戦までは良かった。

その場で見ることが叶わなかったのはあるが、その後に新車ディーラーを回ってしまった。

当然の如く主役は、綺麗な選び放題の車種達に目を奪われてしまう。

 

もう一つ、私は同行前から日産と三菱を勧めていた。

どうせ私の意見など聞かず、自身の気にいるものを購入するだろうと高を括って、あまり中古車が存在していない車であるという認識も無いままに。

 

主役の金銭的制約、支払い能力を改めて具体的に確認する。

問題は無さそうだ。

該当の中古車は2日だけ取り置いてくれるが、もはや悩む時間ももったいない。

購入是非を悩むなら、契約後に納車までの楽しい時間を過ごす方が間違いなく楽しい。

購入については、この4日間十分考えて、更にリサーチもしたはずだ。

 

ディーラーには、私から電話しよう。

最後の条件交渉だ。

先方もすぐさま返事は出来ない。

折り返しの電話を受けると、やはりこちらの譲歩も必要なようだった。

しかし、概ね条件は飲んでくれた。営業担当者も頑張ってくれる人で、良い出会いにもなっている。

 

程なくして、契約書にサインすることになった。

主役もいささか緊張しながら、多くの書類に目を通しサインするという経験。

納車も2〜3週で可能。

まあ上々ではないか。

 

短い時間ではあったが、怒涛のような車選びの時間だった。全方位への気遣いも疲れた。

納車になったら、「黄色の帽子」で車内アイテムでも買って、主役にプレゼントでもするかな。

 

あー、暖かくなってきたな。

青い空の前に真紅の車、その傍らには薄桃色の満開の花と、満面の笑みを浮かべた主役という画像を想像しながら、束の間の達成感と少しの淋しさに包まれた。

 

 

車購入物語 完

 

 

終わりに!

いつもとは異なるテイストで認めたので、長い物語になってしまいました。

読んでいただきありがとうございました。

 

 

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